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北朝鮮はバカどもにかってどのように語られたか

小田実編


「第三世界にとって、かつては日本が進歩のモデルだった。
しかし、今、そのモデルは、例えばアフリカの多くの国にとって、 北朝鮮にとって代わられようとしている。」

小田実『私と朝鮮』(1977年)より

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「北朝鮮の国旗に鎌とハンマーに加えて筆が描かれていることから、 この国がいかにインテリ化に力を入れているかが分る」
「自分達が作ったトラクターがバックしか出来なくても、それは社会主義を自力でやっている証拠である」

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現地指導の原理

 共和国の思想はチュチェ思想といって、これはキム・イルソ ン主席の思想で、現在大きな普遍的思想となっています。そし て共和国の人たちは、世界の未来は第3世界の手にあるんだと いうことを確信しています。
 共和国では、アボジキム・イルソン元帥(アボジーお父さん の意)という歌があるように、キム・イルソン主席はお父さん というイメージがぴったりなんですね。
 そして、キム・イルソン主席の指導原理の中で非常に重要な のは、現地指導なんですね。
 案内の人に現地指導という言葉をよく聞かされたんですけど、 最初のうちはそれほど気に止めなかったんですが、よく考えて みると非常におもしろいことをやってるんですね。というのは、 今共和国では「自然改造5大方針」というのをうち出して、積 極的にとり組んでいるんですよ。


 その中に、16度以上の傾斜地はだんだん畑にするという方 針があるんですが、それでわたしは、そんなこまかいことをど う決めたのかと尋ねたら、主席の賢明な指導があったからだと 言うんですよ。そんなバカなことがあるか、いっ国の元首が、 そんなこまかいことまで知っているはずが無いじゃないかと思 って、キム・イルソン主席に、率直に聞いてみたんですよ。す ると主席は笑いながら、わたしは農民じゃないからそんなこと 知るわけがないと言われるんですよ。
 それじゃどうやってああいう方針をうち出したんですかと尋 ねてみたんですよ。そこがおもしろいんですね。つまり、自分 はあっちこっちよく出かけるんだと、そしてなんの前触れもな しに突然出現して、そこで働く農民の横にいって「おじさんど うですか―」という感じで話しかけて、そこでいろんなことを 聞くんですね。その中でいいこと言うなあと思ったら、それを 覚えておいて、また別の農民の所にいって世間話をしながら、 農民がそれはいいことだと言う、また別な所にいって確かめる わけですよ。そして、それがいいことだと確信すると手帳に書 いておいて、それをどんどん政策にとり入れていくんですね。
わたしが主席にその手帳をくれませんかといったら、主席はこ れは大切な物だといってうしろに隠すんですよ。そうして手帳 に書いたものを大衆化していってそれを論理化、現実化して、 集大成したひとつの政策を作りあげるんですよ。
 この現地指導は、一つの指導のありかただと感心しました。 それに、こういう過程でキム・イルソン主席の思想が作りだ されて行くんだという気がしました。
 わたしは、いろんな人の意見を聞きながら作りあげた思想だ から、これから将来、大きな力になるんとゃないかという気がしました。


わたしが一番気になったのは、共和国の人たちの暮らし向き はどうかということ、そして、共和国のフロの形はどうかとい うことです。
 だからわたしは、共和国へ行ってあっちこっちを、こんにち わってのぞいて、できれば一緒に泊ってみようということから 始めたんですよ。それじゃないと、世の中の本当のありさまと いうのが、わからないと思ったんですよ。
 まず、フロは長方形や四角いやつで、タイル張りがしてあっ て、きれいにしてある家もあるし、時たま白菜を積み上げてい る家もありました。部屋は全部オンドルがほどこされていて、 その熱は火力発電所の廃熱を利用しているんですね。とても暖 かく大変快適でした。
 朝鮮の風習では、客ブトンをちゃんと整えておくのが鉄則ら しく、どこの家を見てもガラス張りのフトンダンスにきちんと 入れてありました。
 いろいろ見たり、泊ってみると人びとの暮らし向きはとてもいいですね。

 収入は30?35歳くらいの共かせぎの家庭で少なくとも2 00ウオンはもらっていますね。
 そのうち、住宅使用料は水道、電気などをふくめて1ウオン たらずで、あと100ウオンくらいで衣食費などをまかなえる んですよ。あとは、日本でも同じように預金してるようです。
おもしろいことに、くじ付預金もありましたよ。
 生活水準はよく、家は2DKと3DKで、テレビや電気ガマなど の電化製品もあり、服もいろいろもっていて、女性はやっぱり おしゃれでした。
 わたしの見たところ、われわれが持っている物は基本的には 全部ありましたし、自分の国ですべてをまかなっています。
 一番かんじんな物はなにかというと食べることで、共和国は 世界的に凶作の中でも穀物を800万トン以上も生産して、食 糧のほとんどを自国でまかなっていました。

このような状態を見て、わたしは共和国は「後進国」じゃな く、本当は世界の最先進国じゃないかと感じたんですよ。よく 見ると、日本や先進国にない物があるんですね。
 教育は11年制義務教育で無料、医療設備は完備され、これ も無料でしょう。おどろくことにいっさいの税金がないですか らね。
 そして、経済やその他のことは自国ですべてまかなっている んですね。
 そういう意味で、共和国は未来に挑戦している国だと思いま したよ。
 わたしは、共和国は現実に未来という物を具現している国だ という気がしたんですよ。わたしたちに、こういう未来がある のだということをつきつけてくる国だと強く感じました。

小田実 『訪朝記 未来に挑戦する国』朝鮮画報 p.47 19772月号


 
 まず、わたしが共和国に行くことになった動機から話をして おきたいと思います。
 一つは、「韓国問題緊急国際会議」を76年8月に開き、そ のとき日本と南朝鮮、それにアメリカやヨーロッパや、第3世 界の主として「韓国」民主化闘争を支援する人たちを呼んだん ですが、共和国の人は呼ばなかったんですよ。それことをわた しは、きちんと説明しておきたかったんです。
 それにもう一つは、南北の統一をとなえながらも北の方のこ とを知らなかった。南のことは視野に入っていたけど、北のこ とは視野の中に入っている面か少ないんじゃないかと感じたん です。それで、ぜひ自分の目で確かめたいし、いろいろ見て考 えてみたかったんですよ。


訪朝記 未来に挑戦する国




彼らの暮らしにはあの悪魔のごとき税金というものが全くない。これは社会主義国をふくめて世界のほかの国には未だどこも見られないことなので特筆大書しておきたいが、
そんなことを言えば、人々の暮らしの基本である食料について「北朝鮮」がほとんど完全に自給できる国であることも述べておかねばならないだろう。
 『私と朝鮮』筑摩書房 1977



南進トンネルに関して
「たしかに今の『北朝鮮』を『南進』の準備体制にある国として見るは、キチガイじみた猜疑心と想像力を必要とするに違いない。
その猜疑心と想像力の現れが『北』が作ったというトンネルだろう」




「第三世界で最も望みのある国はソマリアとマダガスカルだと金日成さんが私との座談の中で言ったということはすでに紹介したが、 そこから話を進めるとすれば、ソマリアとマダガスカルが位置するアフリカから第三世界の太い矢印が東に伸びて、その先端が「北朝鮮」で それは東から伸びてきた「先進国」の矢印と「南北」の境界線で接する。」

「『北朝鮮』の人びと」



北朝鮮もものすごい過酷な管理体制のなかで蓄積してたから、 去年ぐらいからものすごく豊かになったよ。これから韓国との差がものすごく出てくるよ。
季刊「クライシス」85年秋号
(稲垣武『「悪魔払い」の戦後史』文芸春秋 1994より引用)
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[西雷東騒]「武装勢力」は「和解と平和」をつくらない=小田実 /東京

 十月二十七日から三十一日まで、私は韓国へ出かけ、韓国の作家たちが企画、ソウルで開いた「国際作家会議」に出た。
会議の主題は「和解と平和」。
 マケドニアをはじめヨーロッパの作家、チリ、中国、台湾、沖縄、日本、それに、もちろん、地元韓国の作家が集まってそれ ぞれに「和解と平和」を論じた。
 ただ、この会議は、元来、「分断国家」「紛争国家」の作家を招き、彼らを中心として「和解と平和」を論じるはずのものだった。
それができなくなったのは、会議の直前になって起こったアメリカ合州国での「同時多発テロ」とアメリカが始めたアフガニスタン に対する「報復戦争」のためだ。国際情勢緊迫で、「紛争国家」マケドニアの作家は来れたが、「紛争国家」「分断国家」の パレスチナとイスラエルの作家は来れなくなった。そして、この「分断国家」韓国での会議にとってもっとも大事な「北朝鮮」 (朝鮮民主主義人民共和国)の作家の参加は直前になってとりやめになった。
 いや、この会議は、元来、もっと大きく、現在停滞ぎみの「南北」の「和解と平和」を促進させるために、韓国と「北朝鮮」の 芸術家が「南北」朝鮮間の障壁、「DMZ」(非武装地帯)に集まり協同して音楽を演奏し、演劇を上演するという一大イベント の一環として行われるはずのものだった。しかし、国際情勢緊迫を理由に、「北朝鮮」側は参加はとりやめ、一大イベントの 計画は挫折した。
 会議のあいまに、主催者側は参加者を「DMZ」見学に連れて行った。中部、鉄原近くに「DMZ」に接して展望台が建てられ ている。そこに上れば、「DMZ」がつい下に見え、さらにはその先に「北朝鮮」が望見できる。しかし、私が見ていたのは、 「共同警備区域」の「DMZ」から韓国側に帰って来る迷彩服の韓国軍兵士の帰還の光景だった。彼らが万が一後方から 「北」によって射たれたならたちまち応戦する態勢を示して、彼らが移動しているあいだ、「DMZ」のこちら側では韓国軍 兵士が伏せの姿勢で銃をかまえる。かまえる銃口が狙う先は、もちろん、「北」だ。
見ていて息苦しくなったのは、一触即発の危機をそこで感じとったからだ。もちろん、これは「北」も同じようにやっていることだ。
しかし、この一触即発の危機があるかぎり、つづくかぎり、「和解と平和」は来ないにちがいない。「和解と平和」が「南北」間で でき上がればこの一触即発の危機はなくなる―のか。今行われている「南北」間の対話、「南北会談」はまさにその前提で 行われていることだが、しかし、この論理は逆で、まず一触即発の危機をなくすことから、ことを始めるべきではないのか。
それには、まず、双方が武器を捨てることが先決であるにちがいない。そこまではできない。じゃあ、武器を双方とも減らせ。
そこまでもできない。じゃあ、せめて、「DMZ」の範囲を拡大したらどうか。拡大して、せめて双方の首都ソウルとピョンヤンが 入るようにしたらどうか。

 私がこうしたことを今あらためて言うのは、アフガニスタンの錯綜(さくそう)した状況のことをも考えるからだ。「北部同盟」が どうしたか、「タリバン」はどうすればよいのか、混乱に乗じて出て来た「武装勢力」にどう対するのか、と国際社会はしたり顔に 論じ上げるが、「北部同盟」も「タリバン」ももとを正せば便乗組の「武装勢力」同様、昨日の敵は今日の友、今日の友は 明日の敵で、覇権を求めてたがいにたたかって来たただの「武装勢力」なのだ。「武装勢力」はただの「武装勢力」として、武力とそれがつくり出す一触即発の危機を背にして、これからも覇権を求めて動くにちがいない。それは、 全「武装勢力」が、ことの是非を論じるまえに、まず、武器を捨てないかぎり、アフガニスタンには「和解と平和」は来ないことだ。
では、アメリカ、イギリス、ロシアなどに頼るのか。彼らもまた、覇権を求めてアフガニスタンで昨日の敵は今日の友、今日の友は 明日の敵で、やって来た、その意味でのただの「武装勢力」なのだ。「和解と平和」を求めるアフガニスタン市民の 立場に基づいてアフガニスタンの未来を考えるなら、まず、必要なことはアメリカ、イギリスをふくめて全「武装勢力」が武器を 捨てることだ。その実現に当のアフガニスタンとともに国際社会が努力することにしか、各民族の利害が錯綜し対立する 多民族国家の「和解と平和」はない。「平和憲法」をもつ日本は非「武装勢力」としてその努力の最先端に立て。「武装勢力」の 尻馬に乗って軍艦を派遣するなどはもってのほか。「武装勢力」は「和解と平和」をつくらない。(毎日新聞)


小田実
「にいがた市民大学」

2002/10/2(火) 朝鮮から観た豊臣秀吉の「朝鮮征伐」
日本で「朝鮮征伐」として一般に知られている歴史的事件は、「征伐」を受けた朝鮮ではどのように記憶されているのか、また「征伐」の実態は何であったのかについて考察する。
作家、小説「民岩太閤記」作者 小田 実


週刊朝日の小田実【私の朝鮮】に対する書評です

小田がこの国に与える評点はきわめて高い。
「物質的なことがらについて言えば、この社会は日本の社会がもつものを、基本的には 全て持っている社会」であり、さらに食料の自給、完備した社会保障、老後の保障、 11年制義務教育と言った、日本にないものがある。・・そこで人々は「主体思想」を 生活の根底におき、彼ら自身の明日を「信じて、働いて、待つ」のである。
・・・だが日本は韓国に経済進出し、朴政権を助ける事によって朝鮮の分断を固定化している。

関川夏央「退屈な迷宮」新潮文庫p4 
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「1963年に日本が韓国との国交正常化に歩み始めたときから北朝鮮とも国交回復していれば、拉致はなかった。〈中略〉この究明と(拉致被害者家族に対する)国家補償の追及が、国交正常化の第一歩だ。
一方、日本は朝鮮半島を植民地化する国家犯罪を犯した。金日成(総書記)は少なくとも拉致について謝罪したが、日本は従軍慰安婦問題で謝罪も補償もしていない。今こそそれをすべきだ。
日本が国家犯罪を清算せず、国交ができないために、北朝鮮の国家犯罪による自国の犠牲者を生んだ。日朝両国が国家犯罪を認め合い反省することが、これからの『国交』の土台となる。」

2002年9月18日『毎日新聞』より抜粋



小田実が今やアジアのヒーロー
http://www.time.com/time/asia/features/heroes/oda.html

でもって、こんなこと言って
Oda's wife is a Japanese-born Korean who, because of Japan's peculiar racist and xenophobic laws,
does not have citizenship―another cause for which Oda is a spokesman

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